好きで得意なことを、起業と起社、そしてサバイブ〜琉球frogs14期協賛企業インタビュー〜

好きで得意なことを、起業と起社、そしてサバイブ
2022.12
インタビュー:嘉数
今年で14年目になる琉球frogs。
琉球frogs14期の活動を支援してくださっている協賛企業さまの取り組み、応援への想いを多くの方に知ってもらいたくインタビューを行いました。
今回は協賛企業でもあり、琉球frogsスペシャルサポーターでもある株式会社マイネットの上原仁さんのインタビュー記事です。

株式会社マイネット
代表取締役社長
上原 仁 さん
売り手良し、買い手良し、世間良し
ーー本日はよろしくお願いいたします!まず始めに、仁さんと琉球frogsの出会いを教えて下さい。
自分のライフワークとして、地域の起業家発掘の活動にここ10年ぐらい取り組んでいます。
自分自身も地方の出身で、起業した際には東京や都心部にいる人たちだけにチャンスが回っている状態でした。当時は様々な先輩たちに導いていただき、東京で起業しましたが、地方にはチャンスが少ない状態がまだまだ続いていると思っています。
どこに生まれても、どこで活動しても、機会が平等に行き渡るようにしたいという思いを持って、地域の起業家発掘活動に取り組んできました。
その中で、起業家甲子園という総務省関連のイベントの委員をするようになり、私の担当エリアが沖縄になったことが私と琉球frogsの最初の接点ですね。良い機会なので起業家甲子園に琉球frogs生のビジネスプランも参加してもらうことになり、実際に琉球frogs10期の「まごころポスト」のチームが予選大会に参加しました。結果的に全国大会で優勝を獲得したんです。
また、琉球frogsは私の地域の起業家発掘というコンセプトにも合致していたので、より踏み込んで関わろうと思い協賛企業になりました。
ーー仁さんが学生へメンタリングしている様子を何度か見させていただいているのですが、その際に、サービスのどこに社会的価値が生まれているのか、事業価値はどのくらいあるのかを問いとして投げている印象があります。仁さん自身が、そのメンタリングにこだわっている理由や原点をお聞きしたいです。
私は滋賀出身なのですが、滋賀県には昔から近江商人という人たちがいて、私はその近江商人の考え方を大切にしています。近江商人の考え方を象徴する言葉の一つが「三方良し」です。これは売り手良し、買い手良し、 世間良しという考え方です。
ビジネスプロダクトを考えた時に、まず売り手と買い手がいることを考えるのは基本です。
その基本の仕組みの中で、何か不誠実なやり取りをして利益を得るのではなく、 プロダクトに本質的な価値があるからこそ適正な対価が支払われ、双方がハッピーな状態になるというのが「売り手良し買い手良し」の関係です。
その上で、事業のやり取りが世間にも社会にも役に立ち、貢献している存在であることが売り手と買い手の基本の関係に「世間良し」を加えた「三方良し」の考えです。また、三方良しを三立させるためには、ビジネスがサスティナブルであること、またサスティナブルに社会の役に立つことが必須要件だと考えています。
これにはいわゆるSDGsの考え方が前提にあります。買い手から本質的な価値が求められ売り手が提供し、売り手が提供したものに合致した対価を買い手が支払いたいと思えるような状態にあること。それでこそ、本当にサスティナブルなビジネスとして成立します。
売り手買い手が存在しない社会貢献はボランティアで、いずれガス欠してしまう恐れがあるんですよね。
社会貢献がしっかりと「本質的な価値を持ち、対価を生むものである」ということ、そこまでをビジネスモデルとして、三方良しを設計の中に組み入れられていることがビジネスの必須要件だというのが私の根っこにある考え方です。

好きで得意なものを、集中と選択
ーーその他に学生へメンタリングする際に意識していることはありますか?
私は学生起業家だからといって特別扱いはせず、一人の一起業家として向き合います。
当然学生は経験が少ない中で起業プランを考えるので、大人の起業家よりも大事にしてほしいのが「好きで得意なことをやれ」ということです。
特に社会貢献寄りの活動だと、誰かに言われたからやるとか、教科書に書いてあってこれが正しいといわれているからやるという現象が多く発生しているんじゃないかと感じます。でも、これもまたサスティナブルじゃないんですよね。
自分が本当に大好きな沖縄のためとか、おじぃちゃん、おばぁちゃんのためとか、大好きなバスケットボールに関わることとかでいいんです。本当に大好きだと思えること、かつ、そこに自分の得意を注入することで、新たな価値や新たなニーズを生み出すことができる。そういう領域に身を投じることを特に勧めます。
大人の起業家だと、これまでのキャリアで培っている経験や実績があるので、そこを活かして成功確率を上げることができますが、学生の場合はそこまで経験が多くあるわけではないですから。
あとは領域に何を選ぶかも自分たちの気持ちが決して途切れない、どこまでもエネルギーが内から湧き出てくるようなものを選ぶんですよ、と伝えることが多いですね。その他には、学生だけではなくあらゆる起業家に伝えているのが、ビジネス面の「選択と集中」です。
特に学生は、あれもこれもくっつけようという発想で全てやろうとすることが多いんですよね。そうすると、何が強みか分からなくなる上にコストが高くなります。加えて、いろんなものを総合的に揃えたビジネスはすでに大きな会社が取り組んでいることが多々あります。
「分かりづらい」「コストがかかる」「大企業がやってる」これらを選ぶのではなく、しっかりと一点の強みにフォーカスすることによって、「分かりやすく」「コストは削ぎ落として」「競合は少ない」という状態を作れるわけです。
ただ、どうしてもビジネスの経験が少ないと、自分たちが一点突破で集中することになかなか自信を持てなかったり、負けてしまうかもと弱気になったりすることも多いと思います。ですが、実際の企業の勝負所って何段階にも重なっていくものなんです。
まずはローンチして最初のお客さんを掴むこと、次に売れる仕組みを作って利益が出る状態にすること、そしてより普及させること、この段階ごとに求められるレベル感は全然変わってきます。
多くの起業の最初のシーンって、まず最初のお客さんがつくことなんですよね。そして、その最初のお客さんのニーズをピンポイントで突けることこそが本当に選ばれる存在になる重要な要素です。大企業のプロダクトではなく、弱き起業家のプロダクトでも選択される理由がはっきりしていて、実際に選択されることが大事なんです。
例えば、沖縄で沖縄そば屋をやるとなっても、すでに老舗がいっぱいありますよね。なので、あえて「豚骨沖縄そば」という区切り方をして展開する考え方がありえます。
最初のお客さんを掴んでいく上ではすでにメジャーな人と同じような戦い方をするんじゃなくて、10人中1人の人がこれが1番いいと言って選んでくれるような、そういうプロダクトを提供するのが重要です。
勝ち抜いてサバイブする
ーー仁さんのインタビュー記事で、スタートアップは5年で勝たなきゃいけないとおっしゃっている記事を拝見したのですが、なぜそう思うのでしょうか。
これから先のことを見据えての発言です。少し長くなりますがご説明します。
スタートアップ企業として、最初のお客さんを掴み、売れる仕組みを作るのに正直3〜5年かかります。
社会に価値を産める状態になってきた時、いわばプロダクトを出して、お客さんもついて、従業員もいて、取引先とかも含めたエコシステムの中に自分たちが存在し始めた時、この状態になった時に考えなきゃいけないのは、ビジネスが本当にサスティナブルなものかです。
従業員にとっては職場が生活の軸になっているし、お客様にとってもオンリーワンになっていればいるほどこのプロダクトがなくてはならない存在なわけですよね。それがある日突然なくなると困ってしまいます。つまり、社会に価値提供できる状態になった時は、社会の中で自分たちがこの事業を継続することそのものが重要になってくるんです。
持続することで人々への貢献ができるようになった頃には、市場競争の環境に身を置いているでしょうし、もちろん競合製品が出てきたり大手企業が参入することで代替品なんかも出てきたりします。
そうなったとしても、自らが作った仕組みやエコシステムが持続することで、自分の周りにいる人や、ついてきてくれた人たちが幸せになり続けられるわけです。
切り抜けねばならないシーンがやってきた時に、本当に心を強く持ち勝ち抜いてサバイブしきることで、自分の大切な人たちのことを守るんだっていう意識を持つ。これがとても大事なことなんです。
私自身もちょうど創業して3年ぐらいでリーマンショックが来て、本当に物が売れずに周りのスタートアップたちもバタバタと消えていってしまう体験をしました。その中で、私は自分の会社と仲間たち、そしてお客様を守るんだという、強い意志を持ってサバイブすることを選び、実際危機をくぐり抜けたので、実感を持ってこの考え方を重視するようになった経緯があります。
ーーサバイブする、絶対にやり抜けるといった強い意志は、どこから生まれているものなのでしょうか?また、なぜそういう意志が仁さんに根付いているのですか?
すごく深い質問ですね。 2つあります。1つが、自分の人生をマイネットという会社の存在にかけていることです。人生かけるとか、命をかけるっていう言葉があるじゃないですか。でも本当にかけてるのかっていうと、なかなかそうではないことも多いと思うんですよね。
でも私は自分が生み出したこの会社と、それが生み出す社会価値に人生をかけると決めているので、逃げるとか、折れる選択肢がないんですよ。
逆に言うと、折れたり、事業として負けたら人生が負けた、折れたことになります。人生に負けたくはないので、折れないとも言えます。極めてマインドの話になりますけどね。
マイネットで「会いたい時に会いたい人に会える社会の実現」をビジョンに掲げ、人にとって1番大事な人と人との繋がりをより豊かなものにしていくことをやり続ける100年の会社を作るんだ、という信念を貫くことに自分の人生を賭しています。
もう1つはベースにある精神力です。3歳から18歳まで地獄のような剣道漬けの日々だったので、ちょっとやそっとのことではめげないですね。

起業と起社
ーーこれまで経営してて一番辛かったことは何でしょうか?
人にまつわることですね。今でも思い出すのは、まさに起業して数年、ジェットコースターのような時期で寝ずに仕事をする状況が続いていたときに、仲間が心の病と診断されて会社に来られない状態になってしまった時は本当に辛かったです。
私に限らずみんなそうだと思うんですが、起業って、本当に関わる全ての人を幸せにしたいって思いながら起業するんですよ。
一緒にコミットしてくれていた仲間にそういうことが起きてしまったのが最初に起きた一番辛かったことでした。
それ以降も、会社の情勢が変化する中で、信じていた仲間と一緒にゴールまでたどり着くイメージをしていたのに、たどり着けずにその人との別れが起きることは今でも辛いですね。
これを学生の起業家にどう伝えるといいのかですけど……起業することって、起業の業の字のとおりで「生業を起こす」なんですよね。
何らかの価値を生むことを起こすという意味なので、「起業」においては、プロダクトファーストで、組織はセカンドなんです。一方で「起社」という考え方もあります。この場合、社を起こすなので組織ファーストです。そのチームが成立するように、生業を作るという順番になりますよね。
例えば、仲間にすっごく人が良くて、人望が厚くて、人として最高だけど、 朝寝坊はひどいし、なかなか仕事はしないし、結果も出せないぞっていう人がいたとします。起業の観点から見ると、 どれだけ大切で良い友達だったとしても、プロダクトファーストなのでその友人とは別れる選択をせねばならない時がくると思います。
でも、起社をするのであれば、組織ファーストになるので違いますよね。ただ、組織ファースト、プロダクトセカンドでやる会社はほとんどの場合、成長が止まります。
プロダクトファーストなら選択・集中ができますし、そこを貫いて競争に勝つことができるんですが、組織ファーストの場合、いろんなことを人に合わせて選ぶかたちになっていくので、大体の場合は小さい仕事がたくさんある状況になってしまいがちなんですよね。そうなると、競争には勝てないですし、どこかで成長が止まることが多いです。
もちろん、今のは極端な起業と起社の例を話したのであって、できるだけ両立したいという思いは誰しもが持つと思いますし、そうあるべきだと私も思っています。
ただ、本当に苦境にある場合や会社が厳しい場合、事業が成り立たない状況に直面した時には、自分が起業をしているのであればプロダクトファーストにして、チームをプロダクトに合わせて最適な状態にするために時には仲間とお別れをする必要があると考えるのが良いと思います。
ーー2020年ごろに仁さんは9割方沖縄にいたと思うのですが、沖縄の何に魅力を感じていたのでしょうか?
僕は沖縄の人が好きです。ピュアに良きことに向かえる人と沖縄でたくさんお会いしました。そういう人たちと一緒にいたいなと思ったのがすごく大きい理由です。
沖縄には、曲がった思考で考えるのではなく本当に純粋に善に向かおうと考えている人が多いなと感じていますし、今もその気持ちは全然変わりません。
沖縄にそういった人柄の人が多いのは、島国であることや、様々な歴史、美しい海や気候など様々な要素があるんでしょうけれども、結果として生まれている沖縄の人が持つ純度の高さに惚れ込んでいます。
ーー一般社団法人スタートアップ支援協会のメンターもされていますが、沖縄のスタートアップの可能性を教えてください。
起業家が育まれる地として良い場所だと思っています。
東京や大阪、福岡のような大都市圏と比較してというわけではないです。大都市圏は大都市圏で、経済圏として人が集まり、お金が集まる元来の市場原理に準じて有利な場所なので良い環境だよねということを前提にした上で、地方や地域って日本中にも世界中にもたくさんあるわけですよね。そんな地方の中でも際立つ沖縄の良さの一つは交流人口です。
東京のスタートアップや上場済みの人たちで、沖縄嫌いな人っていないんですよね。みんな沖縄が大好きなんですよ。この数年で特にそれが盛り上がっているなと感じます。
例えば、スタートアップイベントをやるから来てくれない?と言うとみんなイエス!って言うんですよね。みんな沖縄だから行きたいんです(笑)。
このように交流人口が多くなるような土壌が沖縄にはあるので、そこに目をつけてfrogs卒業生でもある兼城さんたちと沖縄のコーラルバレーを立ち上げようと動き出しました。
ーー最後に、何かに挑戦している学生に対してのエールがありましたら、お願いいたします!
今日お話ししたように、起業には段階があります。
まず、学生の身で立ち上げるぞ!という段階の時には、やっぱり「好きで得意なことをやれ」と言い続けたいです。今取り組んでいることは本当に好きなことで、かつ得意なことか、という問いを自分に投げてほしいなと思います。
なぜあなたがそれをやるのか、あなたがそれに取り組むことで社会にとってどのような価値があるのか、と問いかけてみてください。「Why you?」に対する答えが、好きで得意なことであるというのを大切にしてほしいです
次にプロダクトを出して、仕組みを作り、会社を作りという段階においては、仲間と事業どちらが大切なんだと悩むシーンが出てくると思います。できれば、徐々に会社として成立させていく時期に入る前に、自分が起業をしたのか起社をしたのかを定めて、仲間とシェアした状態で前に進んでいくと良いと思います。
そして、最後に3〜5年経ってくると必ず壁にぶつかります。会社としても事業としても壁にぶつかるシーンが必ずありますので、その時に絶対にサバイブすることを自分の心に決めてください。サバイブをある種目的化して厳しい時期を乗り越えれば、必ず明るい未来が待っています。
好きで得意なことをやる、起業と起社のすみ分け、そしてサバイブする。これらをステップごとに意識して進んでいくと、社会に役立つ存在になれると思います。

一人でも多くの若者が沖縄という「枠」に囚われた「井の中の蛙」から脱却し
世界という大海で通用する次世代リーダーになる環境づくりを。
私たちは、琉球frogsの活動に共感し寄付してくださった方々を、
一緒に未来を創る仲間という意味を込めてRyukyufrogs Buddies(バディーズ)と呼んでいます。あなたもバディーズになって、未来人財育成の活動をサポートしませんか?
サポートの方法は2つ。
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